まるめてポイ

まるめてポイするような書きたい事を書きたい時に書きなぐります。書いてることをくしゃくしゃ丸めてポイしたくなったら筆を止めます。基本更新しません。

人気のラーメン店と思って並んだら殺伐とした戦場だった件

看板
そしてぼくは

完☆全☆敗☆北

した。



  

その店は毎日行列。
そして常に行列。

これが比喩でもなんでもなくそうだった。

「(そんなになのか……?)」

興味を持ちつつも半信半疑。
名前は聞いたことがあるけど、よくあるチェーン店やん?

そんな思いがぬぐえず、店前を何度も通るが僕は入店にはいたらなかった。

だがしかし、本日。
午後4時。

おやつも終了したであろうその時間でさえ店前で列をつくる姿に
「これはもう脳みそ飛び出るほどウマイに違いない」
やっと重い腰をあげたのだ。

もうここまできたらワクワクしかない。
QP

意を決して列に並び、わくわくるんるんしていると早速店の人が先に注文を聞きに出て来る。

店員「小と大どちらがいいですか?」

ん???

え? なに? 色々省略されすぎてない?
恐らく小と大と言うのはラーメンの分量で間違っても便のことを聞かれていないことは明白だったのですが、あまりの情報量の少なさに僕は一瞬で悟る。

『ヤバイ。ここアレや。上級者の常連が通う系の店や』と。

それに「小」と「大」という二択。怖すぎる。何? 普通はどこにいったの?

僕「どれぐらいの量なんですか?」

僕が尋ねると店員のおっさんは「あ~……」と苦い顔をして言う。

店員「うち、量多いんですよ」

あー、そういうことね。俺のナポリタンとかカプリチョーザとかでもよくある、通常の店の1.3倍ぐらいが普通盛りみたいなノリね。察した。

でも僕、細身のくせにすた丼の特盛りとかギリギリ食える人だからね。
そして僕は男。男たるもの選択はもちろん

僕「じゃあ、だ」
店員「小で普通の店の倍ぐらいなんですヨォ~」
僕「小で」

男たるもの、くだらぬプライドをかかげ、つらぬくのではなく臨機応変に立ち回ってこそだと思った僕は今回、小をチョイス。まあ、小手調べといったところ。

ついでに並ぶとかハイパー嫌いな僕は時間がかかるかも聞いてみた。
結構並んでいるから珍しく30分は覚悟してるけど。

店員「10~15分ですかネェ……」

え? 早くね? 量おおいんだよね?


一抹の不安を抱えながらも本当に10分程度で入店。
きっとタイミングが良かったんだ。そうに違いない。
それか倍の量とか盛ってるだけで少ないフラグ。
これは余裕かもな。ガハハ。

強がりもそこそこにおそるおそる中へ入ると。

ざわざわ
空気の澱みが半端ない。
湯気なのか熱気なのか、汗なのかオーラなのか。
カウンター8席ほどの狭い店内にそんな空気が充満していた。
女子なら10秒でダウンしていることだろう。

入ってすぐの入り口には小汚い自販機。
水、黒烏龍茶、デカビタ、トマトジュースという初期のポケモンの自販機みたいなまとまりのなさだった。そしてよくみるとカウンターにお冷らしきものが無い。

なるほど、ここではこの入口で自分の気に入った相棒を片手に座るのが通なんだな。
前のやつもその前のやつも何か買ってたしな。察した。

黒烏龍茶は250m程度のミニボトルのくせに170円もするインフレを起こしていたので消去法で水を買う。

店の門番、自販機をやりすごすと
その影にかくれてウォーターサーバー

水あるんかい。

110円を完全に無駄にした僕は
「僕、普段からこうだから。水が無料提供されている店であえて水を買うオシャレな僕でありたいから」
という態度を保ち、次の門番、食券の前へとおもむく。

券売機のラインナップはシンプル。
ラーメン・小ブタ・大ブタ・ブタW・生卵

「ブタW」が煽っているようにしか見えないけどとりあえずおいておこう。

一瞬よくわからなかったけど、ブタってのはとりあえず豚肉が入ってくるってことで間違いなさそう。
メニューが少ないってことはとにかく頑固一徹、ラーメン選んどけって事なんだろう。
しかし先程僕はラーメンを小にしてしまったし、ちょっと肉っ気も欲しかったので『小ブタ』をチョイスして座席に座る。

図にするとこんな感じ

 [  カ  ウ  ン  タ  ー  ]
     ●●●●●●●
入口        ↑僕



座ってからそれとなく両サイドのお客さんを見て気づいた。

僕だけ食券の色が違う。

しかもよくみたら黒烏龍茶
小ボトルの癖に170円もする黒烏龍茶

しくじった…!!
やっぱりここはラーメン一択やったんや!!!
ヤバイ!!! 素人と思われる……!!

黒烏龍茶を傍らに置き、モクモクとシンプルなラーメンを食い、さっさと立ち去る。
これこそがこの店の暗黙のルールであり、掟であり、聖戦なのだ。

くそ、何が南アルプスの天然水だ……! 恥ずかしい…! 恥ずかしいよぅ…!!

永遠とも思える時間を所在なく過ごしていると、出来上がりが近いのか店員が何やら順番にオーダーをとりはじめた。

店員「ニンニク入れますか?」

きた! 暗黙のルール!
どうする? どうするんや端の人!

「ありで」

どうするんや次の人!

「ありで」

はい、もう察しました。
この店で言う
「ニンニク入れますか?」
は、戦に臨みにきた戦士かどうかを確かめる隠語。
お前はここに何をしにきたのか? と。

言わば踏み絵なのだ。
ここで「無しで」
と言おうものなら京都風に
「ぶぶづけだしましょうか?」
と言われかねない。

※「ぶぶづけだしましょうか?」とは「お茶漬けだしてやるから食ってさっさと帰れ」の意

先輩が切り開いてくれた道にもちろん僕も続く。

僕『ありで!』

さあ! 次の戦士よ! 後につづけーい!

「無しで」

無いんかい。

無しでもいいんかい。
なんやねん。

***
ほどなくして倒すべき、もとい、食すべきラーメンが登場する。

かかってきなさい

さあ、どこからでもかかってきなさい


店員「はい、小ブタの小ね」

ラーメン

3倍じゃねぇか!

おなかいっぱいや
多くないっすか……?

早くも悟りを開く僕。

いやいや、慌てるな。
デカ盛りチャレンジは野菜から、そんなユーチューブを見た気がする。

油っ気のあるものの前に野菜で胃をガードするという戦法だ。
早速モヤシからめっちゃ食べる。

食べる。

食べる。

……




モヤシでお腹いっぱいなったわ!

なんや、なんやこれは。
僕はいったい何をしにきたんや。

しかもよう見たらなんや、油分多すぎてスープに油の斑点模様すらないやん。
全面油やん。

あと、小豚じゃないよね?
ガッツリやんね?

気づいたら僕の両端に空間できてるね?


 [  カ  ウ  ン  タ  ー  ]
     ●●●●○○○
入口        ↑僕

こんなことになってるね?
皆食べるの早くね?

頑張って頑張って食べ進めてるけど全然減らないね?
なんか麺が汁吸ってどんどんデカくなっていくんですけど?


くるしい
無理や……

その時


視界の端に救世主が……!

あ! あれは!!

とうがらし

唐辛子フレークさんや!!

よっしゃ!! これで勝つる!!!
辛いの大好き!

食欲も促進されて一石二鳥である。

この唐辛子フレークという赤兎馬にまたがり、再び戦場をかけまわろうぞ!!!

「うおおおぉぉぉぉ(シャカシャカシャカ)」

ゴフ

むせた。

集まり、刺さる視線。
もう完全に箸が止まる。

ギブか、ギブなのか。
いや、食べ物残すとかたとえ嫌いな物が出てきても滅多にしたことが無い僕がここでリタイヤするわけにはいかない。

なんて事を考えていたら空いていた席が再び満席になっていた。
完全に食べるの遅い人である。

どうみてもこの戦いについていけてない。
ドラゴンボールで言うと僕はヤムチャにまで成り下がっていた。

やむちゃ1

やむちゃ

埋まりだす席のせいでリタイヤのタイミングも失った。

半ば強制的に満身創痍の第2ラウンド開始であるが、
ぶっちゃけ全てがまんべんなく残ってる。

なんだったら唐辛子フレークで味変えた感あるのに大量に残ってる。

豚、豚だけ食べてせめて見た目をと思うが無理。
一口一口がジョージ・フォアマンのパンチのように重い。

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※最強のハードパンチャー。もちろんパンチされたことはない。

これにはたまらず、ちびちび口に運び抵抗を続けていたがついにノックアウトする僕。
もえつきたぜ
燃え尽きたぜ…真っ白にな…

……






と、その時。
光明がさす。

な、なんだあの光は。

あれは……店員さん……?


店員さんがものすごく哀れな目で僕をみている……?


のこしていいっすよ
「残していいっすよ。(ホンマにこんな顔)」


ぼ、菩薩様や~~~~

しかし……! しかしである……!
ここで「じゃあ…すんませんが……」とは流石に言いづらい。

何の強がりか僕は
僕「あ、はい。ありがとうございます」
とかへいきそうに言っちゃってた。

なんでや…なんで強がったんや僕……
あと数口も入らんのに……

だけど言っちゃったものは仕方がない。
かんがえる

こんな感じで箸停止状態やけど、
もう逃げられないのでひとくち運び、ひとくち運び……

そうだ、僕はここから再スタートをがんば

ギブアップです。


はい、

完☆全☆敗☆北


ごちそうさま
僕「すみません、残します。ごちそうさまでした」

そう言い残し、僕は戦場をとぼとぼと去っていったのでした。
チラ見の視線が痛く刺さる。

ふと後ろを振り返ると未だに長蛇の列。
戦士たちに休みはない。

後は頼んだぞ……


こうして、僕の戦いは終わったのでした。